2014 集団的自衛権の限定的な行使を容認する閣議決定 長く「できない」とされてきたことが、解釈の変更で「限定的にできる」に。国会では手段・手続き・歯止めが争われた。
第2次安倍内閣は閣議決定内閣官房 ↗により憲法解釈を変更し、集団的自衛権の限定的な行使を可能にした。それまで40年以上、歴代内閣は「集団的自衛権の行使は憲法9条に違反し認められない」と国会で答弁し、その立場を維持してきた1,2。法律ではなく解釈の変更によって変えた点が、大きな節目とされる。
武力行使が許されるのは、次のすべてを満たす場合に限るとされた3。
(2)これを排除し、他に適当な手段がないとき
(3)必要最小限度の実力行使にとどめること
この三要件が、行使の範囲を縛る「歯止め」として設計された部分にあたる。
2014年の国会(予算委員会など)では、中身の是非だけでなく、「変える手段」と「歯止めの効き目」が同時に問われた。
過去の見解を覆したのではなく、その論理の枠内での当てはめである、と説明。根拠として1959年の砂川事件最高裁判決判決全文 ↗を援用し、解釈変更は一見明白に違憲でない限り国会と内閣に委ねられている、とした。
砂川判決はもともと在日米軍の合憲性が争われた事件であり、集団的自衛権を認めた判決ではない。40年以上「違憲」としてきた解釈を一内閣の閣議決定で変えること自体が立憲主義・法的安定性に反する、と主張4。
閣議決定の前段では、憲法解釈を所管する内閣法制局の長官人事が論点になった。集団的自衛権の行使に慎重とされた山本庸幸長官が2013年8月に最高裁判所判事へ転出し、後任には行使容認に前向きとされた駐仏大使の小松一郎氏が起用された。内部昇格が慣例だった人事とは異なる起用だった5。山本氏は最高裁判事就任の記者会見で「集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい。実現するには憲法改正が適切だろう」と述べた6。小松氏が2014年に病気で退任(同年6月死去)した後、後任に昇格した横畠裕介氏が、7月の閣議決定時の長官として、その後の国会答弁で解釈変更の合憲性を一貫して擁護した7,8。
3つの軸はいずれも決着していない。核心は、新三要件という「歯止め」が実際に範囲を縛っているのか、解釈次第で広がりうるのか。批判意見は、政府自身が国会で「基本論理において限定がないとしか読めない」と説明したことを根拠に、限定の実効性を疑っている13。この問いは翌2015年の法案審議で頂点に達する。
出典
- 1.声明東京弁護士会 会長声明(2024) ↗
- 2.解説集団的自衛権をめぐる動向 ── 政府の憲法解釈とその見直しに向けた課題 ── 国立国会図書館『調査と情報―ISSUE BRIEF』第827号(2014年6月10日) ↗
- 3.一次資料「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」── 2014年7月1日 閣議決定本文PDF(内閣官房) ↗
- 4.一次資料砂川事件 最高裁大法廷判決(昭和34年12月16日 昭34(あ)710号)── 刑集13巻13号3225頁。 ↗
- 5.報道内閣法制局長官の交代(小松一郎氏→横畠裕介氏)── 政府が横畠氏の昇格を閣議決定。小松氏は病気療養で退任(同年6月死去) ── 日本経済新聞(2014年5月16日) ↗
- 6.報道山本庸幸 元内閣法制局長官の最高裁判事就任時の記者会見での発言「集団的自衛権の行使は従来の憲法解釈では容認は難しい。実現するには憲法改正が適切だろうが、それは国民と国会の判断だ」── 47NEWS(共同通信、2021年10月26日。発言要旨は複数報で同一) ↗
- 7.解説参議院『立法と調査』No.356(2014.9)中内康夫(新三要件・国会答弁の論点を含む) ↗
- 8.一次資料横畠裕介 内閣法制局長官 略歴(内閣法制局参事官・第二部長・第一部長を歴任、平成23年12月 内閣法制次長、平成26年5月 長官昇格)── 首相官邸 閣僚名簿(第4次安倍内閣) ↗
- 9.報道山本庸幸 内閣法制局長官の最高裁判事就任(前任は竹内行夫氏)── 日本経済新聞(2013年8月2日) ↗
- 10.報道内閣法制局長官に近藤正春氏 ── 横畠裕介長官の後任(2019年9月) ── 日本経済新聞(2019年9月11日) ↗
- 11.声明自由法曹団「内閣法制局長官人事に抗議し撤回を求める声明」(2013) ↗
- 12.一次資料徴兵制は憲法第18条が禁ずる「苦役」に該当し許されないとする政府見解 ──「徴兵制度を禁じた日本国憲法第十三条及び第十八条の解釈の変更に関する質問」に対する答弁書(第189回国会 参議院 質問第178号)ほか、平成27年に複数の質問主意書答弁が閣議決定されている ── 参議院 ↗
- 13.解説参議院『立法と調査』No.372(2015.12)国会論議の整理(砂川判決援用・解釈変更の論点を含む) ↗
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